オージーの仕事観 シドニー滞在記 ホームへもどる 

オーストラリアはのんびりした国です。
お世辞にも一生懸命に仕事をする国民とは言えません。

筆者が以前シドニーで勤めていたアメリカ系の会社では、金曜日の昼ごろからみんなソワソワしてきて、4時くらいにはパブで飲み会が始まることがたまにありました。夏だと豪州の4時は日本で2時です。当時筆者はシドニーにいながらにして日本のお客さんを相手にしていたので忙しいときは飲み会には出られませんでしたが、そうでないときは申し訳なく思いながらも出席してました。私はその会社で東京オフィスからシドニーオフィスへ転配属という形で渡豪したので、同じ会社なのにこうも違うものかとかなりのカルチャーショックを受けたものです。

ここでは、「世界の仕事中毒患者」である日本人から見た、豪州人の仕事観について書きたいと思います。

Mini-Me (ミニ・ミー)

アメリカのスラングでオーストラリアのことを"Mini-Me"(私たちを真似してるだけのアメリカの縮小版)と呼ぶことがあるそうですが、私が働いていたのがアメリカ企業ということもあって、失礼ながらもそのスラングに納得できます。仕事は定時で切り上げて、あとは自分の時間を大切にするというスタンスはアメリカそのもののような気がしますが、ときには仕事を放ったらかしで定時前に切り上げてしまっても許される風潮が"Mini" 以上にはなれないゆえんかもしれないと思うのは私だけではないかと思います。アメリカ本土で働いたことはないので実際のところは分かりませんが、当時のアメリカ本社の技術者やお客さんからは、そういう雰囲気は感じられなかったので、たぶんアメリカにはもう少しまともな厳しさがあると信じています(ご存知の方、メールで教えていただけますか?)。

Stress(ストレス)

心理学は専門ではないのですが、豪州人の仕事観を語る上で良いキーワードになるのがこの「ストレス」だと思います。

ストレス(Stress)の本来の意味は「内部に溜まっている力」のことです。例えば、立っているときはあなたの足にストレスが掛かっていますが、イスに座ると今度はイスの脚にストレスがかかります。あなたの体を支えるには、どこかに必ずストレスがかかるのです。

これを今度は日本企業と(米国流の)豪州企業にそれぞれあてはめてみましょう。

日本企業のサービスは、お客さんがイスに座れる状態であり、お客さんは座れて楽チンかもしれませんが、それを支えている会社やその担当者(イス)にはそれなりのストレスが加えられています。だから「顧客第一主義」の日本のサラリーマンは大変なのですね。余談ですが筆者の経験では韓国の方は日本人以上にその傾向が強いです。

これを豪州企業に例えると、完全にあなたのイスになってくれるような会社はなかなか見つかりません。あなたはちょっと腰掛けるくらいはできるかもしれませんが、油断するとその腰掛けはフッと消えてなくなり尻もちをつくかも知れません。結局は自分の足で立つしかないのです。逆にいえば、豪州のサラリーマンたちにはあまりストレスが掛かりません。お客さんが自分の足で立ってくれるからです。

そういう風に考えると、忙しい日本での仕事に疲れた人にとっては豪州は本当にリラックスして仕事ができる環境です。そのぶん、お客さんの立場からすると本当に気の抜けない、さらに言うと信頼を置けないサービスが蔓延しています。

自立心を育てる好環境!?

ちょっと悪く言い過ぎたのでここではフォローします。上述の、「お客さんが自分で立ってくれる」というのはこういうことです。
以下の例では、あなたが日本、豪州(米国)のインターネットプロバイダと契約していたとして、それぞれの対処の違いを模式図にしたものです。プロバイダに限らず、豪州のサービス産業は、まあどこも似たり寄ったりです(下の例は事実をもとにしたフィクションですが、かなり核心を突いている自信はあります)。テルストラの恐怖シドニー賃貸住宅情報を見ていただければさらに良くお分かりいただけるかと思います。
日本企業(上側の図)の場合
ひとつの会社で顧客へ対する窓口になる人というのはたいてい1人、多くても2人で、あなたから見ればその担当者とさえ連絡を取り合えばあとは社内でうまく情報共有して事が進むようになっています。

例えばインターネットの接続がうまくつながらない、などのトラブルに対して、日本企業ならばサポートセンター(窓口)へ電話一本ですぐにトラブルが解決し、利用料の払い戻しなどがある場合にもサポートセンターが経理部や営業担当と処理を進めてくれるので、あなたは直接営業担当と交渉する必要はありません、というよりそんなことはさせてもらえないでしょう。
豪州・米国系企業(下側の図)の場合
窓口がひとつで済むケースはほとんどありません。上の例と同様にインターネット接続ができない場合、サポートセンターへ電話しても修復は技術専門の部隊が第一レベル、第二レベル、と控えており、サポートセンターとの伝言ゲームが始まります。その間、あなたは辛抱強く待ち、場合によってはサポートセンターから逆に詳しい状況を聞き返されたりします。その意味でも、あなたは技術的な知識を身に付けなくてはなりません。また、そのトラブルの原因がプロバイダ側にあったとして利用料の払い戻しなどがある場合は、お客さんは営業担当と直接話をしなければなりません。

うまくディスカウントに成功したとしても、翌月の請求書は今まで通りの金額だったりします。いや、むしろきちんと処理されているほうが不思議です。あなたはまた営業さんに確認して、その結果値引き後の金額だけ払ってくれればいい、ということになったとします。すると後日、今度は経理担当者から直接電話がかかってきて、支払額が足りないとか言われ、また一から説明しなければなりません。

これを、「なんてふざけた会社だ!」と切り捨ててしまうのは簡単です。日本国内ならば、対応が悪ければそれに代わる業者はたくさんありますからね。でもここは豪州なんです。どこもかしこもこういう対応ならば、こちらが考え直すしかありません。

転職が当たり前で社員の定着率が高くない豪州や米国の企業では、組織が縦割りで社員それぞれがプロフェッショナル意識をもって仕事をしています。入社して2〜3年は社内の雑務をやってヨコのつながりをまず覚えてから・・・などとやる日本企業とは根本的に風習が違うのです。日本の企業がゼネラリスト(広範囲になんでもできる人)の集まりだとすれば、豪州・米国企業はスペシャリスト(専門分野に特化した人)の集まりです。どこへ行っても通じる専門知識をもたない人間は簡単に失業してしまいます。だからこそ、専門知識を身に付けてより良い職を求めて転職をする風土が出来上がっているのです。そういう背景があるので企業内の連携が苦手なのは仕方ないことだとも言えます。

これはまた、顧客側も自分の権利や財産は自分で守らなければならないということにもつながります。自己主張できない人間は、欧米型社会ではカモにされるだけなのです。テレビ番組の討論などで、欧米人の交渉の上手さに感心したことがある人は多いと思います。筆者のような純日本人には厳しいものがありますが、若いときからこのような環境で育てば自然にその能力も養われます。

日本人にとってストレスを感じるこの環境こそが、彼らをたくましくさせているのは間違いないでしょう。

本文中では、豪州人=米国人=欧米人 という短絡的図式で進めてきましたが、オーストラリア人はアメリカ人よりは優しくて人当たりが良いですよ。

ここは良い意味で"Mini-Me"に感謝です。

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